6月3日 エビチャーハン・デイ

簡単で美味しくて、そのままでもトッピングとしても活用できる、万能食材・チャーシューの、唯一にして最大の欠点といえば、脂まみれのタレが大量に残ってしまう事である。

我が家の数少ない鍋を一つつぶしてまで長期保存するわけにもいかず、遠からず捨てることになるのではあるが、とはいえこれだけの量の味のついた汁を、出がらし扱いするのも忍びなく、少しぐらいはなにがしか活用したのちにお別れしようという考えに至った。

昨日の夜ベッドの上で、天井を見つめながら冷蔵庫の中のことを想い、豚、脂、ネギ、卵、という数列を、クックパッドに代入した結果、本日のメインディッシュはチャーハンということになり、私は安心して眠りについたのであるが、朝起きて一番に、素直な食欲に従った結果、豚だけは一足先に私の胃の中に還ることとなり、昼の私は途方に暮れるのであった。

肉なしのチャーハンはサイドメニュー止まりの料理であるし、かといってコンビニで出来合いの切り落としチャーシューなど買ってくるのもなんだか癪に障るし、ウインナーやベーコンの入っていないチャーハンを食べるために一人暮らしをしているのだが、そうはいってもまた豚バラブロックを買ってきて、焼き目をつけて煮込み始めれば、もはや私はチャーシューの輪廻から逃れられなくなってしまう。

精肉コーナーを一瞥し、かぶりを振った私は、あきらめて卵かけご飯でも作るかと思い、連日のチャーシューパーティーで底をついた醤油を買おうと、ショーケースの冷気を浴びながら歩く。

うつむき加減の目の端に寿司が映り、引っ張られるように視線を向けた私は、その隣にむきエビを見つけるのだった。

 

そこまでくればこっちのもので、脂の混じったタレをラード代わりに、エビを炒めコメを炒め、仕上げに卵を割って混ぜ合わせて火を通し、ドーム状に盛り付けてネギを飾り付け、机をかたずけて、写真を撮り、余計なものをトリミングして消し、ぼかし、色味を調節し、やはり背景が気になって写真を削除し、机の上から棚に調味料類を移し、エビのパックを処分し、机の汚れをふき取り、皿に散ったコメやエビをドームの陰に隠し、皿の油をふき取り、盛りすぎたネギを食べて減らし、写真を撮ってトリミングし、ぼかし、色味を調節し、文面を考え、インスタグラムに投稿し、コップを洗い、コーラを注ぎ、棚から箸を出して、通知を確認したのち、少し食べ、塩をかけて食べ、たれをかけて食べ、あっという間に完食したのだった。