6月2日 男はだれもみな無口な兵士

以前一度遊んだことのある人が、TwitterでAPEXのメンバーを募集していた。

人とのやり取りに飢えている私は、ここぞとばかりに(しかし冷静さを保ったかのような文体で)リプライを送り、無事に約束を取り付けたのであった。

承諾のリプライのポップアップをタップしてもそのツイートがどこにも見当たらなかったり、その人が鍵のかかったアカウントと何かもめていたり、やっぱり今日は無しという連絡をいただくことになったりしたが、それでも信じて射撃訓練場にこもり続けた結果、なんか知らん人を引き連れたその人が、私にパーティ(催し物のことではない)への招待状を送ってくれたことを見るに、信じる者は救われるし、神様はいるし、Apexlegendsは3人でやるゲームなのである。

そんなわけで、初対面の人とゲームをすることになり、同時にボイスチャットを使ってやり取りをすることとなったのだが、いくら会話に飢えているとはいえ、欲求だけで物事がうまくなるわけもなく、好きこそものの上手なれ、の「好き」と「上手」の間には、風と桶屋の儲けほどの過程を含んでいるわけで、いざ待ち焦がれた生きた人間の声を聴いてしまうと、もはやプレイに集中できず、武器も回復薬もロクに拾わずに、広大なバトルフィールドを無防備に歩くハメになるのだった。

自分の会話下手がいつまでもコンプレックスであり、今日のように相手と距離があるうちは、明るい声でしゃべったり、相手の冗談に乗ってみたり、それほど問題のないであろう立ち回りができるのだが、これが下手に打ち解け始めると、がんばってしゃべるのをやめてしまって、声も暗くなり、冗談も受け流し始め、自分は友達とやり取りできるだけで楽しいからいいのだが、向こうは別にそこまでのツーカーのなかだと思っておらず、無碍にされて嫌な思いをして、あっという間に関係が壊れてしまうのである。

しばらく誰とも会話のない時期を経て、自分のこういう面を見つめなおし、次にしゃべるときは絶対うまくやるぞ、と思っていたのだが、自分の悪い面を見つめなおしたところで、それはそれとしてしばらくしゃべっていなかったわけだから、当然地獄のように緊張し、しゃべるぞ、と思ってへそに力を入れなくてはしゃべれず、当意即妙の返しなどできないし、ゲームを同時並行させるなんてもっと無理なのであった。

世の中に私ほど暇な人間もなかなかおらず、このゲームで人と遊ぶことになれば、結構な確率で私が一番やりこんでいるという状態になるのだが、一人で全員殺せるほどうまくはなく、そこに会話のタスクも上乗せされるので、結局2,3時間やって全くいいとこなしだった。

これを改善するためには、もっと人との会話を通じて話術を鍛え、無理せず自然な会話をできるようにするか、もっと激しい戦場に身を置くことで、プレイングスキルの底上げを図り、会話にCPUを使いながらも、強力な兵士として活躍できるようにするかの二つの方法が想定されるのだが、声帯の使い方を忘れるほどに友達のいない私にとって、それはもはや一択といっても過言ではなく、私は再びドロップシップに乗り込んで、フラグメントイーストに向けて発進した。